10年前に経験した
"IoT"プロジェクトから見抜く
「ERP-MES-現場連携」
による自律生産とは?

ビジネスエンジニアリング株式会社
ソリューション事業本部
SCMソリューション第2本部 SCMソリューション3部
プロジェクトマネージャー
田中 圭司

田中 圭司

多くの製造業がIoTへのチャレンジを開始しているが、その仕組みづくりのあとに本当の課題が待っている。さまざまな装置やセンサーを適切なプロトコルでつなぎさえすれば正しいデータが集まってくると考えがちだが、そもそも、これが大きな間違いなのだ。

10年前からこの課題を捉え、「ERP-MES-現場(設備)」の垂直統合連携をリードしてきたソリューション事業本部 SCMソリューション第2本部 SCMソリューション2部の田中圭司が、「Industrie 4.0」時代に向けた情報連携のあり方を説く。

IoTに幻想を抱いてはいけない
工場では"想定外"が次々に起こる

昨今、製造業ではIndustrie 4.0(第四次産業革命)を見据えたIoTへの取り組みが活発化している。モノづくりの観点からみると、このトレンドは従来のMESがサポートしてきた領域に対する"カイゼン"を繰り返しているだけでは、もはやグローバル市場で戦っていくための競争力を獲得できない時代を迎えたことを意味する。

近年、ハードウェアとソフトウェア両面でのITの進化により、工場内に分散するさまざまな設備や製造ラインの要所に配置した多様なセンサーからデータを収集し、ひとつのプラットフォーム上に統合するといった仕組みを構築することは、確かに比較的容易になった。

だが、本当の課題に直面するのは"それから"なのだ。ソリューション事業本部 SCMソリューション第2本部 SCMソリューション2部の田中圭司をはじめとするコンサルティングチームは、いまから10年前の時点で、すでにその課題に直面し、解決を図ってきた。

主な舞台となったのは、触媒製造を手がける自動車部品メーカーA社が2007~2008年にかけて実施してきたプロジェクトである。ERPとMES、さらには現場(設備)を管理・制御しているOT(Operational Technology)までシームレスに垂直統合。製造実績、製造条件、品質・検査情報など多岐にわたるデータを収集し、リアルタイムに連携・可視化することで、人手による作業を最小限に抑えた自律生産を実現するというものだ。まさに現在の多くの製造業が取り組もうとしているIoTのテーマそのものと言えるだろう。

具体的にA社の取り組みからはどんな課題が顕在化したのだろうか。多くの人は工場内の装置やセンサーデバイスを適切なプロトコルでつなぎさえすれば、各部位から予定どおりのタイミング(順序、頻度)で、正しいデータが集まってくると考えがちだ。「そうした幻想(期待)を抱いていることが、そもそもの間違いなのです。工場内では"想定外"のことが次々に起こりますから」と田中は語る。

「特に現場の各設備やセンサーから生成されるデータは、欠損したり、現実とかけ離れた異常値を発したり、順序が入れ替わって届いたりといったイレギュラーが日常茶飯事で発生します。要するに従来型のシングルタスク、シーケンシャル処理のアーキテクチャでは、データを適切にハンドリングすることができません」

イレギュラーやエラーのパターンを予測
自動リカバリー(再処理)の仕組みを構築へ

上記のような課題を解決するためには、製造現場で発生する多種多様なイレギュラーやエラーのパターンをあらかじめ洗い出しておき、それらのパターンに対して臨機応変に対応できるマルチタスク、イベントドリブンのアーキテクチャを確立する必要がある。

だが、イレギュラーやエラーのパターンを洗い出すといっても、データの発生源となる装置やセンサーが増えれば増えるほど、その組み合わせの数は爆発的に膨らんでいき、人間の想像力では遠く及ばない領域となってしまう。

そもそも一口にデータといっても、中身はさまざまだ。例えばテキスト入力された項目は担当者によって表現に大きなバラツキがある。数値についても各製造プロセスやロット単位で一意に決まるものもあれば、試験データのようにサンプル毎のデータとその統計値(標準偏差、平均値など)が有り、多角的な観点で検証しなければならないものもある。

こうしたことから、多くの企業はMESをベースとしたデータの可視化に落ち着いてしまうのだ。ただし、これによって実現できるのは、出来高に対する予実の進捗状況やモノの所在の把握、製品に対する表面的な品質情報の把握までである。

しかしA社およびB-EN-Gのコンサルティングチームは決してあきらめなかった。あくまでもERP-MES-設備の垂直統合環境から生成されるビッグデータをハンドリングすることに徹底してこだわったのである。

そうしたなかで、突破口を開いたのが田中の経験である。

「実は前職の工場で生産設備の新規立ち上げを担当したことがあるのです。十数社のマルチベンダーで構成された合計99台の生産設備を一斉導入するというもので、各設備の仕様策定から接続方式の決定、プロジェクトの進捗管理まですべてを担当し、最終的に各設備からデータを収集する仕組みづくりまでのとりまとめを行いました。この経験を通じて『設備にイレギュラーやエラーが起こるのは当たり前』という感覚が染みついていましたし、実際にどんなことが起こるかという事前知識も蓄えていました。おかげでA社のプロジェクトでも、現場に起こり得るイレギュラーやエラーのパターンを比較的スムーズに予測できたと自負しています」

この田中の知見をもとに、B-EN-Gのコンサルティングチームはイレギュラーなデータやエラーが発生した際、自動的にリカバリー(再処理)を行う仕組みを構築することで課題を解決。最終的に自律生産を実現したのである。 そしてA社のERP-MES-設備の垂直統合環境は、現在においても新設備の導入や入れ替えを繰り返しながら進化を続けている。

「現在では万が一、出荷後にトラブル(リコール)が発生した際にも、収集・蓄積したデータから短時間で対象製品や原因を特定することが可能になりました。また製造プロセスを取り巻く、より広範なデータの収集にも注力しています。たとえば各設備の製造条件(パラメータ設定、稼働時の温度・圧力・風量など)のほか、製造現場の環境情報(温度や湿度)の変化などをリアルタイムに把握できるようにするとともに、そのデータをBI系の分析ツールにも連携させることで、新しい気づきの発見につなげています」

さらにA社は、2018年春に向けて生産ラインの増設を計画しているが、これまでの実績をベースに整備してきた標準テンプレートを適用することで、新規設備の導入やデータの拡張にも柔軟に対応できるという。

田中 圭司

現場で収集されたデータだからこそ
設計から計画、調達、製造への情報展開

田中 圭司

もちろんA社に限らず、日本の製造業にはまだまだ多くの課題が残っている。10年前から現在のIoTの課題を見据えていたように、現在はその先にある10年先の課題を捉えているのである。

設計から計画、調達、製造への情報展開も、そのテーマのひとつだ。

「特にグローバル市場における顧客ニーズの変化、リードタイムの短縮、品質改善の要求などに対し、設計側の意図や狙いを現場と共有すること、そして現場から設計へのフィードバックを行うこと――。この双方向の情報伝達スピードをいかに高め、スムーズに行えるようにするかが重要です。これはまさにIndustrie 4.0でも提唱されている核心部分で、『マス・カスタマイゼーション』『パーソナライゼーション』といった製造方式を、競合他社に先駆けて確立していくためにも非常に有効な打ち手となります」

実際、現在でも設計と現場が乖離している製造業は決して珍しくなく、そのことが生産の非効率を招く原因となっている。 「たとえば製造ラインの設計者は、それを構成する設備や作業者がどのように稼働するのが望ましいのかという"あるべき状態"を必ず頭に描いています。この情報を現場が共有して理解してこそ、その理想形に近づくために、どんなデータを収集し、どのような可視化や監視を行うべきなのかという"気づき"が生まれてきます。また、そうした観点に基づいて現場で収集されたデータこそ、製造ライン設計にも活かすことができます。当然ですが、製品の開発・設計にも活かされるデータになります。」

多くの日本企業がIoTに向かう過程で必ず直面すると予想される課題に対し、田中をはじめとするB-EN-Gのコンサルティングチームは、設計-現場連携の方法論とともに、その取り組みを支える基本KPIセット、データ共有の標準テンプレート、AIを活用した分析アルゴリズムなどを率先して準備。ディスクリートやプロセスといった業態を問わず、あらゆる製造業の要請に「いつでもお応えできる」体制を整えていく考えである。

[掲載内容は2018年1月時点のものです]

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